ラスクよもやま話

だいふんとうラスク

山形をはじめとする雪国は、1月2月が一番寒い時期を迎える。静かな朝は油断ならない。
車や電車の音など周りの生活音をすべて吸収し、しんしんと降り続ける雪。しかしこの雪もまた自然の恵みなのだ。

山形県の春は降雨量が少ない。そこに冬の間降った雪が溶け雪解け水となって大地や田畑を潤してくれるのだ。
雪国にはそういった自然の摂理が備わっていたりする。時には煩わしいと感じる雪ではあるが、息を飲むほど美しさを備え自然の舞台を作り出してもくれる。

四季の移り変わりを感じられる日本だからこそ生まれる冬の美しき世界。特に山形蔵王の醍醐味は冬にある。雪の豊富なこの時期の厳しい蔵王では、樹が雪と氷におおわれ幻想的な世界を生み出す「樹氷」が観ることができる。

樹に付着した氷と雪によってできる自然の造形だが、実は針葉樹のアオモリトドマツにしかできない。
その仕組みは雪雲とともに運ばれてきた雲粒が枝や葉っぱにぶつかって雪と氷に覆われ始め、その隙間に多くの雪が張り付いて平均風速10~15m/s、平均気温マイナス10℃からマイナス15℃の吹雪の世界でどんどん成長していくのだ。

間近でみると何か巨大な生き物に襲われているような感覚さえある。別名「スノーモンスター」と呼ばれる所以が納得できるほど、雪と氷に覆われ原型をとどめないその姿はすこし不気味に感じるくらいだ。
それでも雪原を埋め尽くす大自然の神秘と奇跡に息をのんでしまう美しさと我々人間の無力さを感じざるを得ない。

「スノーモンスター」ほど巨大ではないが、山形の冬の美しさを表現したラスクがある。
期間限定で販売している「だいふんとうラスク」。優しさや高級感といったイメージがあるシベールに「だんふんとう」とは何とも泥臭く青春の匂いもする。

シベールのラスクはフランスパンから手作りだ。フランスパンに一番合う小麦粉と山形のおいしい水により、自然の力でラスクになるための美味しいパンになろうとするのだ。自然の力が美しいモンスターを作るという点では蔵王の樹氷と一緒かもしれない。

クープと呼ばれる切り込みを入れラスクの形にカットすると、断面がちょうどハートの形になる箇所がある。「しあわせのラスク」として入っていると、ほっこりと幸せな気分にさせてくれるのだが、パンも生き物だ。
どうしてもいい形にならないものの出てくる。そんなパンがキレイなハートになろうと
「大奮闘」した様々な形と色のラスクにホワイトチョコと「粉糖」をまぶした一品が「だいふんとうラスク」だ。

 

サクッとしたラスクの歯ざわりの前にサラサラした粉糖の優しい味が口に広がる。
なんだか「わーーー」と声に出しサラサラふわふわした新雪をほんの少しパクッと口にしたときの子どもの頃を思い出してしまった(笑)。

その後にラスクにコーティングされた濃厚なミルクが感じられるホワイトチョコレートが安心感を与えてくれる、あたたかい飲み物とぜひ一緒に味わってほしい一枚だ。
これはこれで美味しい。
ワケあり商品としてではなく、全くあらしい商品として私たちの目と舌を楽しませてくれるシベールの商品への愛も感じる一品だ。

地元にいると、すでにあるものへの愛着はあるが特別感やその価値が薄くなりがちだ。
そこにあって当たり前のものが、実は他者からすればここにしかない特別な贅沢なものになる。
どんなに形が悪くても、どんなに陳腐なものだとしても、どんなに煩わしいと思っているものでも、これはこれでいい。今ここにあるものに新しい価値をつけていく。

案外私たちの身近なところに他者に誇れる唯一無二の価値が存在しているのかもしれない。
その視点を山形の自然と山形の自然が育んだお菓子が教えてくれた。
そう、私たちはみんなそれぞれ泥臭く「大奮闘」している青春真っ只中の人生を楽しんでいるのだ!

受験シーズンでもある。身近でがんばっている人へ応援の意味も込めてプレゼントしたいラスクだ。

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